高射砲塔
Flakturm

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ベルギーのブリュッセルにある王立軍事博物館の、高射砲に関する展示。
さすがに2連装128mm砲は無いので(米国アバディーンにはある)20o高射砲の部分
を再現している。マネキンの顔が今ひとつドイツ人には見えないのだが....

恐らく多くの日本人がそうであると思うが、私が高射砲塔の存在を知ったのは宮崎監督がモデルグラフィックス誌上に連載していた雑想ノートの短編漫画であった。
こんな頑強なコンクリートの化け物が存在するのか....
本物の高射砲塔を見ることが出来たのはそれから10数年経った2006年、夏休みの旅行でオーストリアのウィーンに行った時だった。
暗く、不気味な建物....ヨーロッパらしい暗い天気が不気味さをさらに増加させる。
その後ハンブルグ、ベルリンの高射砲塔も見る機会があり、やはり気迫迫るおどろおどろしさ、何とも言えない存在感に圧倒された。

高射砲塔はドイツ語でフラックツルム(Flakturm)。高射砲はドイツ語でFliegerabwehrkanone。ドイツ語お得意の、複数の単語を1つにまとめてやたらと長い名詞の単語を作る
パターン(軍事用語にはとにかく多い)だが長すぎるので普通はFlakと略す。
英語で高射砲塔はフラックタワー(Flak tower)。
Flakというドイツ語はすっかり英語の外来語として定着してしまった。派生語として爆撃機搭乗員が身に着けたFlak Jacket, Flak helmetとかがある。
太平洋戦線のKamikaze(日本軍の神風攻撃)も同様に米語の外来語と化している。
その内イスラム教徒の聖戦「ジハード」も米語になったりして。

で、その高射砲を高い所に据付けて360度全周射角を確保したものが高射砲塔。

高射砲塔はG塔(Gefechtsturm)とL塔(Leitturm)のペアで運用される。

G塔には2連装128mm砲×4基と、20mmまたは37mm連装砲多数が配置される。
また、強固なコンクリート構造を活用すべく、防空避難所を兼ねており、中にはG塔一つに付1万人分の避難場所があり、水・食料貯蔵庫や病院も設けられていた。

L塔はレーダーを備えた司令塔の役目を果たし、武装は20mm連装砲多数だが128mm
砲は無い。
これも同様に強固な構造で防空避難所を兼ねている。

強力な武装により毎分8000発の発射量を持って射程14kmをカバーすることが出来たが、連合軍爆撃機はその存在と威嚇を充分承知でこれらを避けて飛行したので、高射砲塔による撃墜戦果は意外と少ない様だ。
むしろその強固な構造と高い砲の位置を活かし、ベルリン攻防戦末期には動物園にあった高射砲塔がソ連地上軍と砲火を交えたのが有名。

そして戦争が終わって平和が訪れた。
一般的な感覚では都市景観を大きく乱し、大都市中心部への通勤が便利な超一等地にあるクセに住居には不向き、そしてナチス負の遺産以外の何者でもない高射砲塔は、当然邪魔者扱いされ、破壊撤去が検討された。
実際に破壊・撤去されたものもあるが、その強固な作りが災いして(古戦場好きには幸いなことに)結構な数が残っている。特にウィーンに建設されたものは全て残っている。
いずれも大都市に作られた為、現在交通の便は非常によく、現存する殆どの高射砲塔には交通機関で簡単に行くことが出来る。


建設された高射砲塔は以下:

ベルリン 動物園 
 G塔 戦後破壊撤去された。

ベルリン 動物園 
 L塔 戦後破壊撤去された。

ベルリン フリードリッヒシャイン地区
G塔  戦後破壊撤去されたが、東ドイツ時代にほんの一部の残骸が一部残っている
らしい。(未見)

ベルリン フリードリッヒシャイン地区
 L塔 戦後破壊撤去された。

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ベルリン フンボルトハイン公園内
G塔 部分的に破壊され、半分以上は盛土で隠されたが、残りは残っていて屋根部、高射砲架などが歩き回れる。
垂直の壁はロッククライミングの練習に使う人も。内部はツアーで見られるらしい(行きたかった...)。52 32 50 N 13 23 06 E

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ベルリン フンボルトハイン公園内
L塔 大部分破壊され、周囲は盛土で隠されているが、外壁の一部が傾いたまま露出している。52 32 39 N 13 23 14 E?

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ハンブルグ ヘイリゲンガイストフェルト
G塔 殆どそのまま残っている。駅前の開けた土地にあり目立つ。現在音楽関連施設として使用中。確かにこれだけコンクリートが厚ければ騒音の苦情は来ないだろう。
53 33 22 N 9 58 12 E

ハンブルグ ヘイリゲンガイストフェルト
L塔は戦後破壊撤去された。

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ハンブルグ ヴィルヘルムスブルグ
G塔 殆どそのまま残っている。
 53 30 36 N 9 59 24 E

ハンブルグ ヴィルヘルムスブルグ
L塔 戦後破壊撤去された。

1944_flakturm07.jpg
ウィーン シュティフツカゼルネ
G塔 残っているが軍の施設内にあり周囲を建物に囲まれているので近づくことが
出来ない。ウィーンの環状路面電車からの撮影。写真中央にかろうじて上の部分が写っている。48 12 06 N 16 21 21 E

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ウィーン シュティフツカゼルネ
L塔 水族館/自然科学博物館として利用されており外壁が大幅に改造され巨大な明り取りの窓になった。外壁はフリークライミングの練習用突起が無数に設けられている。48 11 52 N 16 21 09 E

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ウィーン アウガルテン
G塔 一部破損があるがこれは貯蔵されていた弾薬の、戦後の誤爆 によるものらしい。
現存する高射砲塔の中で最も有名なもの。「地球の歩き方」にも紹介されている。
訪問した時は土砂降りの雨で写真撮影そこそこに車に避難した。
損傷の為壁際まで近づくことは出来ないし、内部は何も利用されていない(利用できない)が、携帯電話のアンテナとしては使われているらしい。48 13 32 N 16 22 22 E

ウィーン アウガルテン
L塔 そのまま残っている。何も利用されていない様子。
大雨の為近づいて見る気力が無かった。 48 13 40 N 16 22 41 E

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ウィーン アレンベルグ公園
G塔 見事に残っている。倉庫として使われているらしい。48 11 54 N 16 23 29 E

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ウィーン アレンベルグ公園
L塔はG塔のすぐ隣にある。これもそのまま残っている。何も利用されていない様子。

1944_flakturm06.jpg
ウィーン中心部にあるシュテファン大聖堂の尖塔からの眺め。
高射砲塔が作られた戦争中当時は、高射砲塔よりも高い建物が無かったのがよく判る。
上の写真、左側はアレンベルグ公園のG塔、右がL塔。
下の写真、左側はアウガルテンのG塔、右がL塔。
1944_flakturm05.jpg




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