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ドイツ海軍潜水艦 Uボートとその基地
U-boat and U-boat bunkers

Uボートは一般に第一次世界大戦、第二次世界大戦のドイツ海軍の潜水艦をさす。英
語表記でU-boat(ユーボート)だが、ドイツ語では国・時代・軍民を問わず潜水艦全て
を指すU-Boot(ウーボート)が元で、これはUnterseebootの略。
第一次世界大戦では計351隻のUボートを運用し、大戦を通じて連合国、中立国の船舶
5000隻近く、計1300万トンを沈めた。
Uボートの半数が戦闘で撃沈され、戦闘以外の損失も10%あった。Uボート乗員の戦死
・行方不明者は5000名。
当初英国に向かう商船を撃沈していたが1917年2月から中立国も含め、連合国に向かう全ての船舶を攻撃する無制限潜水艦作戦に切り替えた。
結局これが米国参戦の原因の一つとなり、ドイツは敗戦へと向かう。

第二次世界大戦では開戦から終戦まで通商破壊作戦が継続され、連合軍側の船舶約
4000隻1500万トンを沈めたのと引き替えに、ドイツ海軍側は潜水艦800隻近くと兵員
30000名近くを失った。
潜水艦を駆逐する技術の発達した第二次世界大戦の方が、潜水艦による戦果の効率が悪くなったのが判る。


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ドイツ博物館に展示されている元祖UボートU-1
ドイツ海軍が1904年に発注したもので、1906年に完成した。
第一次世界大戦勃発時には既に時代遅れとなっており訓練のみに使用。
ミュンヘンにあるドイツ博物館の所有となり、側面の外板を剥がして内部が丸ごと見える状態(面白い!)で展示されている。

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おフランスワインの産地として余りにも有名なボルドー。
ボルドーの町は内陸部に位置するが、海から大型船舶が航行可能。
フランスの降伏以来、イタリア軍が潜水艦基地として使用していたが、ドイツ軍も1941年に潜水艦基地をボルドーに建設開始し、1943年初頭から運用をはじめた。
Uボート基地は幅245m、奥行き162m、高さ19mで天井部の厚さは5.6mあった。
44 52 12 N 0 33 32 W
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ノルウェーのベルゲンに残る潜水艦基地(大きな中央のコンクリートの建造物がそれ)
60 23 27 N 5 17 13 E
ノルウェーがドイツに占領された後に潜水艦基地が建造され、後に拡張された。
1944年末に英空軍の爆撃を受け、ランカスター爆撃機から投下されたトールボーイ爆弾が屋根を突き抜け命中したこともある。
現在はノルウェー海軍及び民間企業が使用している。
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ノルウェーのベルゲンにある水族館で、環境問題に関する展示。
潜水艦U-864(IXD2型)は、1943年8月12日に進水、1943年12月9日に配備され、1944年10月31日まで訓練用に使われた。
日本へ輸出する水銀67トンを含む軍需物資、ジェット戦闘機の図面類、メッサーシュミット社の技術者、日本人技術者を乗せてドイツの軍港、キールから出航した。
途中ベルゲンに入港し、シュノーケルの修理調整を行った後出航した。
運命の1945年2月9日、エンジン不調の為ベルゲンに引き返す途中、英国潜水艦HMSヴェンチュラーに襲撃される。
U-864は潜行したまま回避行動を取ったが、ヴェンチューラーの放った4発の魚雷の内、最後の一発が命中し、船体は真っ二つに割れてベルゲンの北東約60km、深さ150mの海底に沈んだ。
乗員乗客73名は全員死亡。
これは海戦史上、潜水艦同士が潜行したまま交戦し、戦果があった唯一の例。
2003年に船体が発見され、調査の結果、積荷の水銀(環境負荷物質!)が錆びた容器から漏れ出していることを確認。
環境汚染を防ぐ為コンクリートで覆うこと(将来に渡って水銀漏れが防げる保証無し)や引き揚げ(魚雷実弾、水銀、錆びた船体など危険多し)を検討したが現在までのところ対策は実施されていない。
ちなみに水銀は信管の材料として使う。恐らく日本は代わりにゴムなどを帰りの船で輸出する予定だったのだろう。

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ドイツのキール近郊、ラボーに展示されているUボートU-995。
54 24 45 N 10 13 44 E
本艦は1943年7月22日進水、1943年9月16日部隊配備され、ドイツ海軍に於ける9回の航海にて艦船6隻計9474トンを撃沈した。
敗戦と共に英国に対し降伏し、1948年10月ノルウェーに移籍、1952年〜1965年までの間、ノルウェー海軍にて潜水艦「カウラ」として使用された。
ノルウェー海軍退役後、ドイツに1マルクの値段で売られ、現在はキール近郊のラボーに展示され館内が公開されている。

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米国・シカゴの科学博物館に展示されているUボートU-505 (IXCC型)
U-505は1941年5月24日に進水、8月26日に部隊配備された。
フランスのロリアンを母港とし、12回の航海にて船舶8隻(排水量44962トン)を撃沈した。
その一方で、
・ハドソン哨戒機の投下した爆弾の直撃を受け甲板を大破しながら洋上で修理し帰還
 (ハドソン哨戒機は自身の投下した爆弾の破片に被弾して墜落)
・徴用されたフランス人作業者がレジスタンスに通じていて修理時のサボタージュ活動に悩まされた
・長時間に渡る激しい爆雷攻撃に発狂した艦長がクルーの前でピストル自殺
といった波乱を経験している。
12回目の航海中の1944年6月4日、アフリカ大陸西岸沖で米艦隊にソナーで発見され、駆逐艦シャテレイン(DE-149)の放った爆雷攻撃を受け浮上した。
船舶、航空機からの機銃攻撃を受けた為にU-505の艦長は退艦を命じ、自沈準備が整わない内に退艦した為、舵が壊れたU-505はは時計回りに航行を続けた。
米軍は生存者を救出した(甲板で戦死した1名以外全員救出)一方で乗船チームを組織し、8名が司令塔から乗り込み、海図や暗号表を回収すると共に浸水を止めて自爆装置を解除した。
鹵獲したU-505はだいぶ浸水していたが、ディーゼルエンジンとスクリューを切り離して、曳航するときにスクリューを水の抵抗で回すことにより発電してポンプと圧縮機を動かして排水することに成功した。
英国領バミューダに曳航されたU-505は徹底的に調査された。
エニグマ暗号を破られるとドイツ側に悟られないように(既にこの時点でエニグマは英側により破られていたが)、艦を鹵獲したことは機密にされ、捕虜となった乗員58名は他の捕虜や赤十字との接触を一切断たれた為、本国ドイツでは「全員戦死」と認定した。
1954年に米政府からシカゴ市へ寄贈され、シカゴ科学産業博物館で展示されることになった。
破損、欠損している部品は、ドイツの多くの元部品メーカーが無償で提供してくれたものを使って補修した。
写真撮影時の2002年は屋外展示だったが、現在は屋内に展示されている。

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観測用にUボートに搭載されていたフォッケ・アハゲリス Fa 330
潜水艦が浮上した際、長さ150mのケーブルで引っ張ると風を受けてロータが回転し揚力を発し、水面からの高さ120mまで上昇する。
これにより、司令塔からは通常5海里(9km)の距離までしか見えない所を、Fa330に乗った観測員は25海里(46km)まで見渡すことが出来た。
回収・分解・収納には20分を要する為、艦が緊急潜行する必要がある場合、乗員ごと見捨ててFa330を切り離すことになる。
切り離されたFa330はロータの自転によりゆっくり着水する。
Fa330が搭載された艦は少なく、戦果も殆ど無いらしい。
アニメ映画「天空の城ラピュタ」に登場する凧の元ネタか。
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ドイツ海軍のムサ苦しい潜水艦クルー。
通常軍隊で顎鬚はご法度だが、水が貴重な潜水艦内では伸ばすしかない。
フランス・アンブレウーズの戦争博物館、Musee 39-45にて。
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ドイツ海軍の小型潜水艦、XXVIIBs ゼーフント(アザラシの意味)
二人乗りで魚雷を2発装備。
1944年9月から285隻が就航し、商船9隻と軍艦2隻の戦果と引替えに35隻が失われた。
訓練事故、悪天候、実戦等で100人以上が犠牲になった。
ドイツヴィルヘルムスハーフェンの海軍博物館にて。

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ドイツ海軍の小型潜水艦、ビーバー。一人乗りで魚雷を2発装備。
324隻が建造されたが戦果に乏しく、目立った戦果は1944年12月24日に貨物船アランアデールをアントワープ近郊で沈めた程度。
乗員居住区と魚雷部が切り離せるだけ回天よりマシ、というもの。
オランダのオーバールン博物館にて。

U-ボートに限らず、潜水艦を扱った映画には傑作が多い。
一般人が経験出来ない、特殊な環境による緊張感や、直接見ることの無い敵を、音響で探すといった感覚は非日常体験の極みであり映画題材として適しているからであろう。
U-ボートに関していえば眼下の敵、Uボートが大傑作。
特にドイツのテレビ映画が元になっているUボートは、戦争映画としてこれ以上の出来栄えはないだろう。
マーフィーの戦いは、潜水艦攻撃に執念を燃やすマーフィーの立場で一方的に描かれているが映画として楽しめる。
ピーターオトゥールは、こういう執念・気迫といった役が上手い。
しかし、マッケンジー脱出作戦もそうだがあからさまに現代の潜水艦と判るのはいかがなものか。
U-ボートが脇役で出てくる、レーダース失われたアークはロードショー公開された当時、高校が終わってから見に行ったのだが「何でこんな面白い映画に人が入っていないのだ?」と疑問。
考えてみればこの頃のスピルバークが一番良かった。潜水艦は、ドイツ映画Uボートの借り物。
U-571、U-ボート最後の決断はちょっと映画としての出来が疑問。




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